ファスナーの最初の特許の名前は、「靴のための留め金」だった

毎日上げ下げするファスナー。1893年の最初の特許の題名は、「靴のための、留め金の掛け外し」だった。2件の米国特許の原文と、二次資料をたどって、その来歴を読む。
ファスナーを、1日に何回、上げ下げするだろう。
ズボン、上着、バッグ、財布。あまりに身近で、「これは何のために生まれたのか」なんて、考えたことがなかった。
最初の特許の題名を、読んでみた。
1893年の特許の名前
1893年8月29日に認められた、米国特許 第504,038号。発明者は、シカゴのホイットコム・ジャッドソン(Whitcomb L. Judson)。
題名は、「Clasp Locker or Unlocker for Shoes」。日本語にすると、「靴のための、留め金の掛け外し」といった意味だ。
特許の本文を読むと、これは、並んだ複数の留め金を、1回の連続した動きで、まとめて掛けたり外したりする仕掛けだという。そして、「靴の留め具として、特に設計した。ただし、一般の用途にも使える」という趣旨のことが、書いてあった。
つまり、生まれた目的は、服ではなく、靴だった。
24年後の特許
もう1件、読んでみた。
1917年3月20日に認められた、米国特許 第1,219,881号。発明者は、ギデオン・サンドバック(Gideon Sundback)。題名は「Separable fastener(分けられる留め具)」。出願は1914年8月27日だ。
こちらは、現在のファスナーに近い形で、2本の細い帯の上に、同じ形の突起とくぼみが、互い違いに並ぶ。それを、滑らせる部品で、噛み合わせたり、外したりする。
本文は、用途を「衣服や、その他の用途」と書く。請求項には、「靴、コルセット、その他の身につけるもの」のための、開け閉めの道具、という言い方が出てくる。
1893年の「靴」から、1917年には、「衣服」と、「身につけるもの」へ。特許の言葉が、少しだけ広がっている。
名前は、長靴から
では、「ジッパー(zipper)」という名前は、どこから来たのか。
二次資料の説明によると、1923年に、アメリカのB.F.グッドリッチ社が、このファスナーを付けたゴムの長靴に、「zipper」という名前をつけ、商標にしたという。つまり、名前もまた、服ではなく、靴の仲間のものから広まった、と説明されている。
ただし、これは二次資料の説明で、原典は、今回、開いていない。
「靴」で始まった、ということ
ここまでで、特許の原文で確かめられたのは、こうだ。
最初の特許の題名は、「靴のため」だった。24年後の特許は、「衣服」も挙げていた。
では、ファスナーが、ズボンや上着に広がったのは、いつ、どんな経緯だったのか。
次にファスナーを上げるとき、足元の靴に、ちょっと目をやってみる。この小さな金具は、そこから始まった。
出典
- 米国特許 第504,038号「Clasp Locker or Unlocker for Shoes」(Google Patents。発明者 Whitcomb L. Judson。1893年8月29日付与)
- 米国特許 第1,219,881号「Separable fastener」(Google Patents。発明者 Gideon Sundback。1917年3月20日付与)
- JSTOR Daily「How WWI Made the Zipper a Success」
情報確認:2026年10月