AIの時代に、なぜ「本を読む人」みたいな服が注目されているのか。

ツイードやコーデュロイ、ローファー。どこか「本を読む人」みたいな服が、なぜ今、格好よく見えるのか。AIの時代との関係を、断定せずに、少しだけ考えてみました。
最近、メンズファッションを眺めていると、少し気になる服装がある。
ツイードのジャケット。 コーデュロイのパンツ。 シャツにニット、ローファー。 眼鏡や革靴、少し使い込まれたバッグ。
どこか「本を読む人」みたいな格好だ。
最近では、こうした文学的で知的な雰囲気を持つスタイルを、Poetcore(ポエットコア)と呼ぶことがある。
いわゆる「おしゃれな服」というより、そこにいる人の背景まで想像したくなるような服。
「この人、本を読むんだろうな」
そんな物語まで服装に感じさせる。
「静かな贅沢」の次に来たもの
少し前まで、ファッションでは「Quiet Luxury(クワイエット・ラグジュアリー)」のような、派手にブランドを主張しないスタイルが大きな潮流になっていた。
上質な素材。 落ち着いた色。 ロゴを見せない。 長く着られるベーシックな服。
その方向性は今でも消えていない。
ただ、最近のスタイルを見ていると、そこに少し違うものが混ざってきている。
色や柄。 古着っぽさ。 手仕事の感じ。
「きれいに整っている」だけではなく、その人が何を好きで、どんな時間を過ごしているのかが見える服だ。
Poetcoreも、その流れのひとつとして見ることができる。
なぜ、今「本を読む人」なのか
面白いのは、これがデジタル化の進んだ今に起きていることだ。
スマートフォンがあれば、いつでも情報にアクセスできる。
文章も、画像も、音楽も、動画も、ものすごい速さで消費できる。
そして今では、AIに話しかければ文章まで一瞬で作ってくれる。
そんな時代に、なぜか「本を読む人」のような服が格好よく見える。
もちろん、AIが登場したからPoetcoreが注目された、と単純に説明することはできない。
ファッションには、過去のスタイルが巡ってくるという性質もある。
クラシックな服装や文学的なスタイルの流れは、AIが広がる前から、Dark Academiaなどの形で存在していた。
それでも、今この服装を見ると少し面白く感じる。
もしかすると僕たちは、速くなりすぎたものから、少しだけ距離を置く雰囲気に惹かれているのかもしれない。
服から「時間」が見える
本を読む。
コーヒーを淹れる。
古いレコードを聴く。
革靴を手入れする。
そんな行為には、すぐに結果が出ないものが多い。
効率だけを考えれば、もっと速い方法はいくらでもある。
でも、だからこそ面白い。
服も少し似ている。
新品で完璧な服より、少し皺があったり、素材の表情が見えたり、長く使うことで味が出たりするものには、「時間」が残る。
Poetcoreの魅力も、単にジャケットや眼鏡を組み合わせることではないのだと思う。
その服を着ている人が、
「この人はどんな本を読むんだろう」
「休日はどんな場所に行くんだろう」
「このジャケット、何年くらい着ているんだろう」
と想像できる。
服が、その人のプロフィールのようになる。
新しいものが増えるほど、古いものが面白くなる
不思議なのは、未来に進んでいるはずなのに、格好いいものが少しずつ昔に戻っていることだ。
新しい技術が登場する一方で、フィルムカメラが見直されたり、レコードが楽しまれたりしている。
もちろん、昔に戻りたいわけではない。
便利なものは便利なままでいい。
AIだって使えばいい。
ただ、全部を速く、便利にする必要はないのかもしれない。
だからこそ、時間のかかるものや、少し面倒なものに価値を感じる。
Poetcoreのような服も、そんな感覚の延長線上にあるのかもしれない。
「何を着るか」より、「どんな時間を過ごしているか」
ファッションは、時代をそのまま映すものだと言われる。
でも、もしかすると服は、時代そのものよりも、その時代に生きる人が何を求めているかを映しているのかもしれない。
速さを求める時代だから、ゆっくりしたものが気になる。
情報が溢れる時代だから、ひとつの本をじっくり読む姿が格好よく見える。
AIが何でも作ってくれる時代だからこそ、人間が時間をかけて選んだものに惹かれる。
それがPoetcoreのすべての理由ではない。
けれど、今この服装が面白く見える理由のひとつとして考えてみると、なかなか興味深い。
未来はどんどん新しくなっていく。
なのに、僕たちが「格好いい」と感じるものは、ときどき少しだけ古い。
その矛盾が、なんだか今っぽい。
出典
- Wikipedia「Literary chic」
- PureWow「Get Ready for "Poetcore" Winter」
- Tatler Asia「Poetcore style」
- Daily Sabah「End of quiet luxury: Is fashion ready to be seen again?」
- Fortune「Gen Z film camera market revival」(2026-07-14)
- RIAA「Year-End 2025 Revenue Report」(2026-03)
- Wikipedia「Dark academia」
情報確認:2026年10月