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ミモレットの皮には、チーズダニの仕事が入っている

ふつうのチーズでは払われてしまうダニが、ミモレットでは歓迎される。数年かけて皮をかじらせ、出荷前に空気とブラシで落とす、少し変わった熟成の話。

丸ごと1個のミモレットと、切り分けた鮮やかなオレンジ色の断面
KarstenBuhr58 / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

オレンジ色の、丸いチーズ

フランスに、ミモレットというチーズがある。

丸くて、切ると中は鮮やかなオレンジ色をしている。

少し珍しい色をしているだけで、見た目は、ふつうのチーズだ。

ところが、このチーズの皮と風味には、小さな虫が関わっている。

チーズダニ。

顕微鏡で見るような大きさの、ダニの一種だ。

アメリカの公共ラジオ局NPRは、2013年にこのチーズを取り上げ、ミモレット独特の皮と風味にはこのダニが関わっている、と伝えた。

ダニは、ふつう「困りもの」。ここでは歓迎される

チーズダニは、熟成させたチーズの表面にすみついて、表面に生える小さなカビを食べて暮らしている。

NPRによれば、多くの熟成チーズでは、ダニは業界にとってのやっかいものだ。見つけたら、そっとブラシで払い落とされる。

ミモレットでは、それが逆になる。ダニは、むしろ歓迎される。

数年のあいだ皮をかじらせて、売る前に、圧縮空気とブラシで落とす。

それでも、取りきれなかったダニが、少しは残るという。

皮が細かなくぼみに覆われたミモレットと、切り分けたオレンジ色の断面
Javier Lastras / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons

ハーバード大学でチーズの研究室を運営している微生物学者のRachel Duttonさんは、ダニが皮をかじると、皮の表面積が増えて、空気にも触れやすくなると説明している。そうなると、ほかの微生物がはたらきやすくなるのだという。

ダニの役割は、皮だけではないらしい。2016年の研究は、ミモレットなどに特有の「レモンのような風味」が、チーズ自体の発酵ではなく、ダニが出す物質によるものだと結論づけている。

2013年、ダニの数でチーズが止まった

そのミモレットが、2013年、アメリカで小さな騒ぎになった。

NPRが2013年5月に伝えたところでは、アメリカのFDA(食品医薬品局)が、1トンを超えるミモレットを、アメリカに入れずに止めていた。

FDAの担当者によると、公式な上限はないが、目標値は、1平方インチ(約6.5平方センチ)あたり6匹以下だった。NPRは、これをミモレットにとって「ほぼ不可能に近い基準」と書いている。

ミモレットの大手生産者、Isigny社の北米担当のBenoit de Vittonさんは、「ダニのせいで、人が食べるのに適さない、と言われた」と話している。

一方で、Duttonさんによれば、ダニによるアレルギーの報告はあるが、それは大量のダニに触れた人に限られているようだ。

フランスでは、ミモレットを支持する声が、ラジオや動画、SNSでも広がったという。

ここまでは、NPRが2013年5月の時点で伝えた話だ。この続きは、ここでは追っていない。

「チーズは、生きている」

Duttonさんは、笑いながら言う。

「チーズは、まさに生きている」

カビ、細菌、酵母、そしてダニ。そうした生き物たちのはたらきが、チーズをつくっている。

パンも、ヨーグルトも、ワインも、さまざまな微生物の発酵でできている、とDuttonさんは続ける。

NPRは記事を、こう結んでいる。フランスの多くの人にとって、ミモレットは、記憶と、家族と、故郷の味だ。そして、ダニも一緒にいる。

知らなくても、困ることはない。

でも、次にミモレットを見かけたら、あの皮のことを、ちょっとだけ思い出すかもしれない。

出典

情報確認:2026年10月